2008年7月27日日曜日

【本】 半島を出よ




【写真】半島を出よ 村上龍 2005年



先週、今週の土日はかなりの時間をこれに費やした。


長い。


そして人物描写濃く描かれている。
読後の感想。「疲れた」



村上龍の著書で圧倒的に好きな本は
『愛と幻想のファシズム』と『希望の国のエクソダス』だ。



村上龍著作で面白かった本は?と聞かれたら上の2冊を挙げるが、
すごい本は?と聞かれたら『半島を出よ』と答える。



上記2冊のほうが好きな理由は、
英雄冒険劇なワクワク感があってフィクションの性質が強いから。
読んでいて素直に面白いと感じる。




『半島を出よ』は面白くない。

「リアル」すぎるお話だから。


時代背景、政府やマスコミの対応、人物描写、逮捕拷問殺人などが
本当に起こりそうな描写ばかりで読んでいてとても疲れる。
こんな疲れる本、わざわざ休日に読まなくてもいいよなと思いながら読んでいた。


でも、読み終えずにはいられなかった。



善とか悪とかを通り越した次元で物語が進んでいく。

人間の臭いを強烈に感じる本だなと思う。


南米生息の世界で一番美しい猛毒カエルと人間の対比関係が興味深い。


カエルは、なぜ毒を武器にしているのか?
なぜ全身が美しい色で覆われているのか?

そこには自然界のシンプルで理に適った理由がある。



方や、人間の行動や心理状態はとても複雑だ。
理では説明の仕様がないことが起きたりする。

この話に出てくる登場人物は特に複雑。
ひとりひとりの臭いが強烈だったから
読んでいて疲れたのだと思うし、 だからすごいリアルなのだ。




最後の最後まで、『半島を出よ』の世界観は
壊れることなく、飛躍することなく、完結した。



すごい本だなと思った。




村上龍氏の構想力と細部にまでこだわるパワーには脱帽するしかない。

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